朱
それは暑い暑い夏の日だった。
泥酔した父親が僕に向かって言った。
「昔はわかんなかったけどよォ……。
お前、オレに……全然似てねえよなァ?」
父親の目は血走っていた。
「なんでだ?」
父親が僕の顔を殴ろうとした
その時
『やめて!!!!』
お母さんが父親を突き飛ばした。
そして、僕を抱きしめながら
「この子のッ…!!!!この子の顔だけはッ…!!!!!!!!
殴らないで!!!!!傷をつけないで!!!!!」
泣き叫びながらそう言った。
お母さんの腕の中は
暖かかった。
でもそれが最後だった。
「ふざけんじゃねえぞォ゛ォ゛オ゛!!!!!!!!!」
父親は包丁を持っていた。
次の瞬間
お母さんの頭がなかった
お母さんの首から溢れた血は
僕にかかった
僕は。
綺麗だと思った。
ポストの赤でも、りんごの赤でもない
綺麗な
綺麗な
赤
ずっと見ていたい…。
母の首から溢れ出る血を見ながらそう思った。
僕は。
落ちていた包丁を拾って
父親の首を掻っ切った。