Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
十、夜……?
横顔でも分かる程冷たく鋭い十夜の瞳。
怒りに彩られたその瞳は闇色に染まり、情の欠片も感じられない。
背筋が凍る程鋭いその瞳は、まさに歴代最強と謳われた“黒皇”そのもの。
その瞳がスッと細められた瞬間、あたしは言葉を発するよりも先に十夜の左腕を掴んだ。
「十夜……」
恐る恐る呼び掛けると、十夜はゆっくりと此方へ振り返り、あたしの手をギュッと握り締めた。
その仕草にホッと安堵の溜め息が零れる。
──けれど、それもほんの束の間の事で。
『……痛い目、ねぇ。それは俺等じゃなくてお前等の方かもしれねぇぜ?』
携帯から聞こえてきたシンの声に再び宿る闇の色。
「お前──」
「……っ、」
十夜がそう発した時、室内にコンコンと扉をノックする音が響いた。
「悪い。遅くなった」
返事をする前に開いたリビングの扉。
「貴兄……」
そこから入ってきたのは十夜が呼び寄せた貴兄と獅鷹幹部達だった。
「凛音……」
目が合った瞬間貴兄の表情が曇り、視線がある一点を捉える。
それはあたしの口元。
シンに殴られた、口元の傷。
「貴兄……」
哀しげに引き寄せられた眉根にチクン、と胸が痛む。