Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
「嵐」
貴兄がそれを右手で制し、シンに向かって問い掛けた。
「お前が電話をしてきたという事は抗争の日時が決まったのか?」
『まぁな。お察しの通りだ』
「……もったいぶってねぇでさっさと言えよ」
嵐ちゃんだけじゃなく煌までもが苛々し始め、ガシガシと後頭部を掻きむしる。
『そんな苛々すんなよ。元仲間だったじゃねぇか。愉しく話しようぜ』
「テメェ、ふざけんな!!」
からかい口調のシンに流石の煌もブチキレた。
ドンッと握り拳で叩き付けられたテーブルが衝撃で激しく揺れ動く。
「シン、お前と世間話をするつもりはない。用件だけ言え」
十夜……。
キレているのは煌だけじゃなかったらしい。
否、十夜だけじゃない。
鳳皇幹部も獅鷹幹部もみんな険しい表情で携帯を見ている。
これから闘うであろう敵を鋭い眼光で睨み付けている皆。
その竦み上がりそうな視線に、いよいよ抗争が始まるのだと嫌でも実感させられた。
『つれない奴等だな。まぁいい。本題に入ろうか』
シンがそう言った瞬間、この場の全員が息を呑んだのが分かった。
ただ一点を見据え、口を一文字に固く結ぶ両幹部達。
『──明日』
明日?
『昼一時、由井ヶ崎にある西沢工業の工場跡』
「……由井ヶ崎の、西沢工業?」
どこだよそれ、と怪訝な表情を浮かべながら呟く煌。
グルリと皆を見渡すと、煌同様顔を顰めながら首を傾げていた。
その表情から察するに、どうやら皆は由井ヶ崎の西沢工業の工場跡を知らないらしい。