Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
まるで小さな子供でも抱える様に軽々とソファーから抱き上げた貴兄は、顔が見える様向かい合わせにあたしを抱え直した。
頭一個分高いあたしは必然的に貴兄を見下ろす形になっていて。
「貴兄?」
上から貴兄を見下ろせば、貴兄はキュッと強く下唇を噛み締めた。
「ごめんな、黙ってて」
「え?」
「Dの事。奴等の正体知ってたのに黙ってた」
「………」
「全部、ちゃんと説明するから」
「……うん」
ずるい。
そんなしゅんと肩を落とされたら何も言えないじゃない。
会ったら即行問いただすつもりだったのに。
そんな捨てられた犬みたいな目で見られたら何も言えないよ。
ワザとじゃないって分かってるけど、確信犯じゃないのかなって少しだけ疑ってしまうあたしは性格が悪いのだろうか。
「ホントはすぐに知りたいけど、今はやめとく」
「凛音」
「今はそれよりも明日の事の方が大事でしょ?」
「………」
「もう、そんな顔しないでよ!男前が台無し!」
「イテッ。頭突きはないだろ、頭突きは」
貴兄の両頬をむぎゅっと両手で包み込み、ゴツンと頭突きをかましたあたしに貴兄が可愛らしく唇を尖らせる。