Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
カーブが多い山道。
当然先が見えず、車の認識は難しい。
そのせいで奴等が此方に向かっている事に気付かず、エンジン音に気付いた時には前方のカーブから一台の得体の知れないワゴン車が現れていた。
薄汚れたグレーの外装と所々に見られる大小の傷や凹み。
後部座席だけではなく運転席にまで貼られたフルスモークが一般人の車ではない事を物語っていた。
直ぐに危険を察知した三人は足を止め、電話中だった慧くんはすぐに貴兄を呼び寄せた。
けど、貴兄達はまだ工場付近にいる。間に合わない。
自分達だけでやるしかないと判断した三人は、ワゴン車から降りてきた男達に向かって構えた。
けれど、その男達は三人に向かってくると思いきや、慧くんには見向きもせず、一直線に優音と遊大に向かっていったと言う。
それを見た慧くんはこう思ったらしい。
“D”は最初から遊大と優音だけを狙っていた、と。
奴等が何故二人を狙ったのかは分からない。
優音なら未だしも、遊大が拉致られる理由って一体……?
貴兄達は難しい表情をしたまま何かを考え込んでいたが、結局何の答えも出ないまま説明が続けられた。
“D”に狙われた優音と遊大。
優音が言っていた“遊大に二回助けられた”というのはこの時の事だった。
一回目は奴等に拘束されそうになった時。
優音に襲い掛かった敵は遊大より一人多く、そのせいで少し手こずった。
慧くんが加勢し、拘束されそうになった優音を遊大が無事奪還。
だが、その後反撃に出ようとした三人の前に新たなワゴン車が現れた。
さっきのボロボロのワゴン車とは違い、まだ真新しさの残る黒塗りのワゴン車。
そのワゴン車から出てきたのは、“D”の幹部、キョウとカイだった。