Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
『……っ、』
階段の段差を利用して十夜の懐に素早く入り込んだ凛音は、握り締めていた拳を十夜の腹部目掛けて勢いよく振り上げた。
『……チッ』
──パシッ。
十夜はそれを寸でのところで受け止めると、その受け止めた拳を逆に押し返し、凛音から素早く距離を取る。
そして階段の手摺りを利用して軽やかに滑り降りた。
──コツン。
靴音を響かせながら静かに地面に降り立った十夜は、乱れた前髪を気だるげに掻き上げると、その漆黒の瞳に再び凛音の姿を映した。
凛音もまた体勢を整え、上から十夜を見下ろす。
『………』
『………』
睨み合う両者。
静かに飛び散る火花が、倉庫内に静寂を誘う。
『──お前、何者だ?』
先に口を開いたのは十夜だった。
スッと細められた漆黒の双眸が凛音の表情の変化を見逃すまいと怪しげに光っている。
そんな十夜の視線にハッと乾いた笑みを零した凛音は、
『……何者?俺が何者かって?ハッ。見当もつかねぇのかよ』
ゆるりと口角を引き上げた後、十夜に向かってそう一言吐き捨てた。
『……あ゛?』
凛音の言葉に訝しげに眉を潜める十夜。
『何を言ってる?』
その言葉を聞いた凛音はカッと目を見開いたかと思うと、鎮めたばかりの感情を再び爆発させた。
『しらばっくれんな!!アンタが下っ端に遊大を襲うよう命令したんだろうが……っ!!』