Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
『下っ端に、遊大を襲うよう命令?』
凛音の唸るような叫声に更に引き寄せられる十夜の眉。
その表情からは偽りなど一切感じられない。
だが、怒り狂った凛音には正常な判断など出来る訳がなかった。
『河上、どういうことだ』
そんな凛音の心情を知る由もない十夜は、更に凛音の感情を逆撫でするような言葉を言い放つ。
『“遊大”って誰だ。説明しろ』
凛音を通り越し、凛音の背後にいる河上へと向けられる十夜の視線。
その視線が余計に凛音の感情を震い立たせた。
『しらばっくれんなって言ってんだろうがっ!!アンタが遊大を襲うよう命令したんだろっ!?
アンタは“獅鷹”の“幹部”である遊大を襲って“獅鷹”を潰そうとしたっ!!』
『……獅鷹?幹部?』
『“獅鷹”を潰そうだなんて絶対に許さない……っ!!』
『お前、もしかして“獅鷹”の……』
──そう言った十夜の言葉はもう凛音の耳には届いていなかった。
何故なら、十夜が発した時にはもう音の足は既に地面を蹴り上げていたから。
『……っ』
怒りの色を灯し、真っ直ぐに十夜だけを見据えている凛音の瞳。
最後の一段を力強く蹴り上げた凛音は、握り締めていた握り拳を十夜の顔目掛けて大きく振り下ろした。