Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
『……っ、オイッ、』
繰り出された拳が十夜の頬を微かに掠め、空を切る。
『話を───』
息つく暇もなく繰り出される左右の拳に、十夜は言葉を発する事さえ出来ない。
けど、それでも十夜は攻撃の合間を見て凛音に言葉を投げかけた。
──けれど。
『今更言い訳なんか聞きたくねぇ!』
どれだけ言葉を投げかけても凛音の耳に届くことはなかった。
心の中でせめぎ合う“負の感情”。
それが凛音の心を支配していたから。
今の凛音には何を言っても届かない。
目の前にいる十夜はもう、遊大を怪我させた敵でしかなかった。
『……チッ』
それを悟った十夜は決意せざるを得なかった。
力でねじ伏せるしかないという事を。
『マジかよ……』
“鳳皇総長”が受け身だったのはほんの最初だけで、その後はもう何の遠慮もしてはいなかった。
それなのに、未だ激しい攻防を繰り広げている二人。
『……あの黒皇と互角でやり合ってんぞ』
その場に居た者達は、ただ呆然とした表情で二人を傍観していることしか出来なかった。
当然だろう。
“侵入者”を相手しているのは最強と謳われている“鳳皇総長”。
その男に“侵入者”は怯む事無く立ち向かい、互角に戦っているのだから。
驚かない方がオカシイ。