Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
──ガッ!
『……っ』
『……アンタ、ナメてんの?』
十夜に回し蹴りを食らわせた凛音が、忌々しげに舌打ちをしながら十夜から数メートル距離を取り、その鋭い眼光で十夜を射抜く。
『本気出せよ』
凛音は本能で感じ取ったのだろう。
十夜がまだ本気を出していないという事を。
『………』
『……チッ。いいよ。だったら本気にさせるまでだ』
何の反応も示さない十夜にそう吐き捨てた凛音は、細められた瞳に闘争心を滾らせると、再び地面を蹴り上げた。
蹴るや否や、一瞬にして縮まる二人の距離。
背丈の低い凛音が瞬時に十夜の懐に忍び込む。
──けれど。
『……お前、獅鷹の人間か?』
そんなに簡単に忍び込ませるほど鳳皇総長は甘くなかった。
『やっと本気になってくれたって訳?』
目にも止まらぬ速さで身を翻した十夜に凛音が目を細めて口端を引き上げる。
……のも束の間。
再び凛音の足が地面を蹴り上げた。
急所目掛けて疾風の如く繰り出される凛音の長い手足。
軽い打撃だが、その拳は確実に十夜の急所だけを狙っていた。