Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
長い攻防が続いたある時、凛音に一瞬隙が出来た。
それを十夜が見逃す訳がなく。
凛音に向かって真っ直ぐに伸びていく手。
ガッと凛音の胸元を掴んだ次の瞬間、
『……っ、』
何かしら行動に移すと思われていた十夜が、何故か目を見開いて停止した。
凛音は今だ、とでも言うように両手で十夜の胸元を鷲掴みにし、勢いよく手前に引いた後その反動を利用して思いきり突き飛ばした。
まさか突き飛ばされるとは思っていなかったのか、十夜はバランスを崩し、すぐ真後ろにあったバイク用品の廃材の上に仰向けになって倒れる。
山のように積んであった廃材と共に崩れ落ちる十夜。
周囲の者達はその光景を呆然とした表情で傍観していた。
総長である十夜に誰一人声を掛けないことに凛音は一瞬不審に思ったけど、特に気にはしなかった。
それよりも、十夜の次の行動の方が気になった。
強く突き飛ばしたが、そこまでダメージを受けるほどではないと思っていたからすぐにでも起き上がると思っていた。
それなのに十夜は仰向けになったまま一寸も動かない。
『……なに。油断させて攻撃でもするつもり?』
そう言って凛音が空笑いした時。
──ガンッ!!
『……っ』
凛音の後頭部に襲ったのは強い衝撃。
誰かに殴られたと悟った時にはもう、凛音の意識は何の抵抗も出来ないほど薄らいでいた。
ズルズルと崩れるようにして倒れていく凛音。
その凛音に一人の男が近付いていく。
『──連れて行け』
その男こそが凛音を殴った張本人。
“白狼”の総長、河上 尋雅だった。
-客観的視点 end-