Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
“あの日”のことは今でもまだハッキリと思い出せる。
“あの日”、あたしは胸がはち切れる思いで十夜に抜けると言った。
苦しくて苦しくて哀しくて。
繁華街の中を無我夢中で走った。
そんな時だった。
黒烏の奴等に声を掛けられたのは。
「あの時、お前が黒烏と喧嘩している姿を見て衝撃を受けた」
衝撃?
眉を潜めるあたしに中田が小さく頷く。
「そう。喧嘩するお前の姿は“アイツ”と全く同じだったから」
え?
「アイツ……?」
待って。理解出来ない。どういうこと?
「俺もいたんだよ。あの時、お前が乗り込んできた“白狼”の倉庫に」
「……っ、嘘……」
本当、に?中田も白狼の倉庫にいたの?
驚愕の新事実に驚きを隠せない。
「白狼とは鳳皇の傘下に入るよりも前から繋がっていた」
「………」
「あの日、白狼にいたのはたまたまだったんだ。俺が“あの時”、あの場所にいた事は桐谷も充も知らない。
知っていたのは白狼の総長であるシン、……いや、河上 尋雅だけだ」
「……カワカミ、ヒロマサ」
それがシンの本当の名前。