Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
「俺はあの時まで凛音が桐谷とやり合った男だって事は気付いてなかった。
当然だよな。だって“あの時”の凛音はどこからどう見ても男にしか見えなかったんだから」
「………」
「だから、あの場に居合わせた時、凛音が“あの時”の男だと気付いて驚いた。
まさか、あのクソ強ぇ男が女だったなんてな」
中田は当時の事を思い出しているのか、フッと笑みを浮かべて参ったとでも言うように肩を竦めてみせる。
「……なんで、あたしだって気付いたの?」
中田の言う通り、“あの時”あたしは男装していた。
それなら絶対に“あたし”だって気付かれないはず。
それなのになんで……。
「魅せられたんだよ」
「……え?」
「お前の喧嘩する姿に魅せられた」
「あたしの、喧嘩する姿……?」
中田の言葉がイマイチピンとこなくて、首を傾げる。
そんなあたしに中田はクツクツと喉を鳴らした。
「お前、自分の事全然分かってねぇんだな」
「そんなの分かる訳……」
「まぁ、そうだよな。分かる訳ねぇか」
──まぁとにかく綺麗だったんだよ。喧嘩する姿が。
そう言った中田はテレているのかフイッとそっぽを向いてしまった。