Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
「そう、それ。それを言われた時言ってやろうと思った。まぁ、運悪く邪魔が入ったけどな」
思い出した言葉を紡げば、あの時の形相とは180度異なる笑顔でカラカラと笑う中田。
今だから笑えるけれど、あの時のあたし達は今にも取っ組み合いをしそうな勢いだった。
あの時の言葉にそんな深い意味が込められていたなんて思ってもいなかったし、ただ、あたしを鳳皇から引き離したいから咄嗟に出た言葉なのかと思ってた。
けど、今なら解る。
“あの言葉”は確かに“真実を知っている”と言っていた。
「あの時は衝動で言いそうになったけど、俺はお前に“真実”を告げる気はなかった」
「中田……」
「意味、分かるよな?」
「……うん」
“意味”
それは解ってる。
それが解らないほどあたしは馬鹿じゃない。
「………」
「………」
あたしが口を閉ざした事で薄暗い室内に宿る沈黙。
頭の中には今までの出来事がまるで走馬灯のように駆け巡っていた。
鳳皇に出会って十夜に恋をして。
中田と黒烏に絡まれて助けられて。
貴兄に鳳皇との事がバレて離されて。
──そして。
鳳皇と獅鷹が同盟を組んだ。
その後、“D”と充くんが現れて、十夜と遥香さんの過去を知った。
その“過去”のほんの一部に、“あたし”がいたんだ。
“あたし”、が。