Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
「アイツはお前があの時の男だって事を多分気付いていない」
「………」
「でも、今回の騒動で確実に耳に入れると思う」
「……っ、」
十夜が、“真実”を知ってしまうかもしれない。
ううん。確実に知る。
その“真実”を知ってしまった時、十夜はどう思うだろうか。
許してくれる?
それとも許してくれない?
「アイツは許すよ」
ハッキリとそう言い切った中田にグッと眉が引き寄った。
そんなあたしを見た中田がフッと小さく笑みを零し、あたしの目を真っ直ぐ見つめる。
「凛音、思い出せ。“桐谷”を」
「……十夜を?」
「そうだ。お前は俺よりアイツの事を知ってるんだろう?」
「………」
「アイツは“真実”を知って離れていくような奴なのかよ」
「………」
「騙したと……怪我させられたから別れると。そんな薄情な事を言う人間なのか?」
「……っ」
「そんな薄っぺらい愛情しか持っていな──」
「違う!!」
違う。
十夜の愛は薄っぺらくなんかない。
──“お前は、俺の傍から離れるな”
「十夜は獅鷹総長の妹だって知ったのに逢いに来てくれた」
いつ帰ってくるかも分からないあたしを、ずっとずっと待っててくれた。
──“好きだ”
「何回も、言ってくれたの」
あの優しい声色で。
蕩けるような穏やかな笑顔で。
何度も何度も“好き”だって言ってくれた。
「十夜の愛は薄っぺらくなんかない」
あたしは、十夜から数え切れないほど沢山の愛を貰った。
十夜ほど愛情深い人をあたしは知らない。