Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】


「私が悪くないんなら、凛音ちゃんも悪くないよ。……悪いのはあの人達なんだから」


「遥香さん……」



遥香さんの表情が曇ったのは、“あの人達”の中に充くんが含まれているからだろう。


充くんはDの中でも中心人物で、鳳皇を貶めようとしていた人。


けど、遥香さんにとったら充くんは“それだけ”じゃないんだ。



仲間に裏切られる哀しみはあたしもよく知っている。


貴兄が──獅鷹の皆が敵だと知った時は、言葉では言い表せないぐらい哀しかった。


あんな想い、遥香さんには味わってほしくない。





「──私、充くんに話したい事があるの」


「話したい事……?」


「うん。それは──」



そう言った時、ドアの方からガタッと音がして、慌てて振り返る。


すると、ドアが開いて、そこから一人の男が姿を現した。



「……っ、充くん!!」



その人物は、遥香さんが会いたいと心の底から願っていた人。






「なんで充くんが……」


部屋に入ってきた充くんはどこからどう見ても普通ではなくて、眉間に皺を寄せながら大きく肩で息をしている。


まるで慌てて此処へ来たかのような……。



「……っ遥香さん、怪我は!?」


あたしなんか見向きもせず、一直線に遥香さんの元へと駆け寄っていく充くん。


ポケットからサバイバルナイフを取り出したかと思うと、素早くロープを切った。



「だいじょう──」


充くんが言い終わる前にバシンッと響いた音。


それは、遥香さんが充くんを平手打ちした音だった。
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