Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
「遥香、さん……?」
殴られた頬を押さえながら、呆然と遥香さんを見下ろす充くん。
そんな充くんに対して遥香さんは、唇を噛み締めながら叩いた右手を左手でぎゅっと握りしめた。
「……っ、ばかっ!」
その言葉を発するよりも先に充くんに抱き着いた遥香さん。
「遥香さん……」
充くんは抱き締め返そうとしたけど出来ないようだった。
抱きしめようと中途半端に浮いた両手が、だらんと元の位置へと戻っていく。
「遥香さん、俺──」
「ごめんね、充くん」
「……っ」
「本当にごめんなさい」
「……遥香さん……」
遥香さんの目から流れ落ちる一筋の涙。
……なんで……?
“ごめんなさい”なんて、遥香さんが謝る必要なんてないのに。
全部充くんが勝手にしたことなんだから。
遥香さんが謝る必要なんてないのに。
「なんで謝るんですか?悪いのは俺──」
「違う!悪いのは私なの!私が話してなかったから……。話してたら充くんはこんな事しなかった!」
話……。
それって十夜との事……?