Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】


「……私、充くんに何も言わなかった。あんなにも毎日一緒に居たのに……あんなにも私の事を大切にしてくれたのに、何も……言わなかった」


「………」


遥香さんの言葉に顔を逸らして俯いてしまった充くん。


それを察したのか、遥香さんは身体を離して下から充くんを見上げた。



「……充くん。十夜は私を裏切ってなんかないの。最後まで私の事を考えてくれてた。十夜を利用したのは私の方なの」


「……遥香さんが、利用?」


「そう。私の醜い感情で十夜を振り回してしまった」



そう言った遥香さんはそっと目を閉じ、小さく息を吐き出した。



「私──」


「あ、あの!あたし此処にいない方がいいですよね?っていうか、此処でゆっくり話してても……」


大丈夫なんですか?


そう言おうとした時、この部屋に入って初めて充くんがあたしを見た。


悪意は向けられていないものの鋭い視線は変わらなくて。


あの時の充くんの責める目が───言葉が、脳裏に蘇った。




充くんはまだあたしの事を認めた訳じゃない。


此処に居るのは遥香さんが捕まってしまったから。


Dとはもう接触していないと中田は言ってたけど、鳳皇側に付いたという訳でもないと思う。


だから、まだ警戒は必要だ。





「ごめんね、凛音ちゃん!今すぐ外すから!」


慌てて両手足のロープを切ってくれた遥香さん。


「ありがとうございます」とお礼を言うと、遥香さんは再び充くんに目を向けた。
< 310 / 460 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop