Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
大声で制すと、ハッと我に返った遥香さん。
「ご、ごめんね凛音ちゃん」
直ぐに取り乱した事に気付いて謝ってくれたけどその表情は曇ったままで。
その辛そうな顔を見ていられなくて、あたしは直ぐに気持ちを伝えた。
「遥香さん、あたしは十夜から離れるつもりはありません」
「……え?」
「遥香さんから話を聞いて、もっと離れたくなくなりました」
「凛音ちゃん……」
「遥香さんが十夜の事、沢山教えてくれたから」
遥香さんが教えてくれた十夜の想いは、あたしにとって凄く大切なもの。
もう、十夜と離れようだなんて絶対に思わない。
「凛音ちゃん……」
ホッと安堵の笑みを零す遥香さんにつられてあたしも笑みが零れる。
「ありがとう」
「……っ」
遥香さんの目に浮かぶ大粒の涙。
それを見て、あたしの目にも涙が滲んだ。
「……っ、あたしの方こそ、ありがとうございます。遥香さんが居なかったら……」
それ以上の言葉は言えなかった。
遥香さんに抱き締められたから。
震える両腕で、力一杯抱き締められたから。
「ありがとう……っ」
何度も何度も繰り返されるその感謝の言葉に、胸が一杯になって何も言えなくなる。
今まで生きてきて、こんなにも心の底から感謝される事があっただろうか。
……ううん、ない。
自分の事でもないのにこんなにも一生懸命になれる遥香さんはやっぱり尊敬すべき人だ。
「凛音ちゃん、これからも十夜の事よろしくね」
「はい!遥香さんも」
──よろしくお願いします。
そう言って、微笑み合う。
十夜に会ったら、伝えよう。自分の想いと感謝の言葉を。
そして、力一杯抱き着くんだ。