Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
「充くん、私──」
「もう何も言わないで下さい」
「充くん……」
「桐谷さんとの事、ちゃんと理解しました。遥香さんの気持ちを無視して勝手に行動してしまい、すみませんでした」
「やだっ、顔を上げて充くん!充くんは悪くないよ!私が言ってなかったせいで──」
「それでもっ」
「……っ」
「……それでも遥香さんを傷付けた事には変わりないです」
「充くん……」
「凛音さんも……すみませんでした」
「………」
あれだけあたしに敵意を向けていた充くんが、今は別人のような顔で頭を下げている。
そんな充くんに対してあたしは何の言葉もかけられなかった。──否、何て声を掛けたらいいのか分からなかった。
だって、あたしの中ではまだ気持ちの整理がついていないから。
真実を知ってしまったあの時の哀しみが未だにあたしの中で生き続けていて、今はまだ、この感情をどう言い表せばいいのか分からない。
けど、そんな気持ちの中で、一つだけ言える事がある。それは、充くんを責める気はないという事。
偽善だって思われるかもしれないけど、あたしはもうこれ以上誰とも争いたくはない。
だから、この感情は自分の中で留めておこうと思う。
……とはいえ、これ以上頭を下げ続けられるのは流石に居心地が悪いから、取り敢えず顔を上げて貰わないと。
そう思って口を開いたら、
「あ、私だ。……十夜?」
タイミング悪く携帯が鳴った。
相手はどうやら十夜らしい。
そう言えば長い事話し込んでて忘れてたけど、前回の電話から十五分は経ってる様な気がする。
もしかして、何かあった?