Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
「十夜!煌!陽!彼方!」
車が動き出し、駐車場から出て行こうとする。
それに食らい付こうと皆が走って来るけれど、どうやっても車には追い付かなくて。
「凛音!!」
「りっちゃん!」
皆の声だけがあたしの元へ届いた。
「いやだ……」
次第に遠くなっていく皆の姿。
「っ、うぅ~」
やっと帰れると思ったのに……。
シンの前で泣きたくなんかないのにどうやっても堪えきれなくて、せめてバックミラーから逃れようと顔の向きを変えた。
「チッ」
ちょうどその時、シンから聞こえた舌打ち。
その舌打ちに視線を戻せば、
「えっ!?」
目に飛び込んできたのはシンではなく、車の前に立ち塞がる十夜の姿だった。
「十夜!!」
なんで此処に十夜が居るの!?
「チッ。アイツ先回りしやがったのか」
……そうか。
そう忌々しげに吐き出したシンに納得する。
十夜はこの車道が一方通行だと知っていたんだ。だから、先回りして車の前に立ち塞がる事が出来た。
「十夜!」
十夜が道路を塞いだ事によって次第に遅くなっていくスピード。
十夜のお陰で車が止まった。
そう思ったのに……。
「クソがっ」
「ちょ……!」
それはぬか喜びに終わってしまった。
十夜まであと五メートル程という所で急加速する車。
「シン!止めて!!止めて!!」
直ぐに危険を感じてそう叫んだけど既に遅く。
「十夜逃げて!!」
その叫び声と同時に、鈍い衝撃が車を襲った。