Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
「や……やだぁぁぁぁぁ!!」
一瞬の出来事だった。
十夜が轢かれる訳がない。
そう思いたいけど、自分が受けた強い衝撃が事実だという事を物語っていて。
直ぐ様振り返って確認すると、倒れている十夜の姿がハッキリと見えた。
「十夜!!十夜!!」
倒れている十夜に駆け寄っていく幹部達。
けど、誰も十夜に触れようとはしない。
「十夜……っ」
もしかしたら触れられない状態なのかもしれない。
そう思うと込み上げる怒りを抑えきれなくて、シンに向かって思いっきり叫んだ。
「……っ、許さない!!なんで止まらなかったの!?人を轢くなんて──!」
「ハッ。そんなにスピード出てねぇから大丈夫だろ。直前に避けてたしな。軽傷だよ、軽傷」
「……っ」
乾いた笑みを浮かべるシンはもう正気には見えなかった。
追い詰められている状況のせいなのか、それとも人を轢いてしまったせいなのか。
どちらなのかは分からないけれど、この状況で正気を失ってしまった事は確かだろう。
これ以上何か言えば自分の身が危ない。
そう思ったあたしは、口を噤んで崩れるように座席に倒れ込んだ。
「……っ、ぅ……」
十夜……。
ぶつかる瞬間は怖くて見ていないけど、ぶつかった時の衝撃と直後の倒れている十夜の姿が今も目に焼きついている。
十夜……お願いだから無事でいて。
お願いだから……。
「うぅ……」
何も出来ない無力なあたしは、十夜の無事を願う事しか出来なかった。