Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
「っせぇな!!黙ってろ!!」
その叫びと共に荒々しく放り投げられて、固い地面に打ち付けられた。
余りの痛さに声を発する事も出来なくて、ただ背中を丸めて痛みを堪える。
そんなあたしを冷めた目で一瞥したシンは、先にこの場所に居たらしい下っ端に何か指示した後、振り返る事なく出て行った。
「はぁ……」
視界からシンが消えて、ホッと溜め息が零れる。
別に怖いとかではないけれど、嫌悪感があるせいか、一緒に居るだけで疲れる。
「十夜……」
これから一体どうなるんだろう……。
仰向けになって、天井に流れるパイプを見ながら車に轢かれた十夜を思い出す。
脳裏に映る十夜の姿は眉を潜めるほど痛々しくて、思い出すだけで涙が浮かんできた。
いくら十夜の心配をしても、──どれだけシンを許さないと罵っても、あたしには何もする事が出来ない。
役に、立たない。
それがどうしようもなく腹立たしくて、血が滲む程強く下唇を噛み締めた。
「……ぅ、っ」
隙間から洩れる嗚咽さえ憎らしく思えるのは、感情が昂っている証拠。
けれど、今はそれを発散する術がなく、ただ泣く事しか出来ない。
今、あたしが出来る事と言えば、せいぜい祈る事ぐらいだ。
十夜が無事でいますように。
皆が、無事でいますように。
ただ、そう祈るだけ。