Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】

「やだっ」


外に出ると人影はなく、あるのは簡素な造りの倉庫だけ。

人質が居る場所に見張りの一人もいないなんてオカシイと思ったけれど、今はそんな事を深く考えている暇はない。


「離せ!!何処に連れて行く気!?」


何とかして逃げなきゃ。

無駄だと分かっていても抵抗し続けてやるんだから!


「離せ!!はな──っ」


そう言いかけた時、ある“音”が耳に入ってきた。

それは、人の声。


……もしかして、鳳皇が来てるの?


ジッと耳を澄ませば、聞こえるのは確かに人の声で。
けど、敵か味方かは倉庫に阻まれているせいで確認出来ない。


十夜が来てくれた?
ううん。そんな訳ない。絶対に違う。

十夜は車に跳ねられたんだ。絶対に来れる訳がない。


そう思っているのに……。


「十夜ー!!」


そこに居るのが十夜であって欲しいなんて、そんな有り得ない事を願っている。


「十夜……っ!」


──十夜に、逢いたいよ。







「凛音!!」

「っっ」


耳に飛び込んできたのは十夜ではない声だった。

けれど、その人も心から逢いたいと思っていた人。


「っっ」


跳ねる様に顔を上げると、丁度あたしの呼びかけに応えてくれた人が倉庫の影から飛び出してきたところで。


「貴兄!!」

「凛音!!」


貴兄の後ろには優音も居て、二人共目が合うなりこっちに走ってきてくれた。

けど、立ち塞がった男達のせいで距離が縮まる事はなく、逆に姿を見せた事であたしを担いでいた男が逆方向へと走っていく。


「凛音!!」

「凛音!!……っテメェ、待てや!!」

「貴兄!優!!」


手を伸ばしたくても、縛られてるせいで伸ばせなくて。

直ぐそこに二人が居るのに、駆け寄ってもいけない。
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