Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
貴兄、優音……っ。
あたしを追い掛けてくる二人を見て、繁華街での光景がフラッシュバックする。
貴兄と優音の姿があの時の十夜達と重なって、息が出来ないぐらい胸が苦しくなった。
──『凛音!!』
目の前に居るのは貴兄じゃない。
「十夜……、十夜ー!!」
けど、あたしの目にはもう十夜にしか見えなかった。
「嵐!!」
あたしではないその名前にハッと意識が戻って、それと同時に十夜が消えて貴兄へと切り替わる。
「貴兄……」
目の前に居るのは確かに獅鷹総長である貴兄で。
だけど、あたしを追い掛けて来てくれた筈の貴兄はあたしではなく違う人を見ていた。
それに疑問を感じた時、
「はーい。止まろうかー」
この場にそぐわない陽気な声が背後から聞こえてきた。
「っ、嵐、ちゃん……?」
その声は、獅鷹幹部である嵐ちゃんのもので。
担がれているせいで顔は見えないけれど、声で直ぐに分かった。
「ウチの凛音ちゃんを何処に連れて行こうとしてんのかなー」
「ヴッ」
「ちょぉ……!」
まさかとは思うけど、嵐ちゃん、あたしを担いでる男を持ち上げてるの!?
男の足が宙に浮いている所を見ると、どうやら嵐ちゃんがあたしごと男を持ち上げているらしい。
ちょっとちょっとちょっと!何も持ち上げなくてもいいじゃない!
これだから筋肉馬鹿は!