Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】

十、夜……?



意識が消えかけていてもその唇が十夜のものだと直ぐに分かった。



忘れる訳がない。

忘れられる訳がない。


だって、十夜はあたしが唯一欲する人だから。




薄っすらと目を開ければ、近くで見たいと切望していた漆黒の瞳があって。

目が合うと、まるであたしの呼び掛けに呼応する様に細められた。



──やっと、触れられた。



思ってることは、きっと一緒。


互いに返事するかの様に指を絡ませ合い、酸素を分け合う。



口の隙間から零れる空気は小さな気泡となって上昇し、あたしと十夜を誘う。




幻想的だと思った。


僅かな酸素しかなくて苦しい筈なのにそれを感じさせない程眩い光景が目の前にあって。


さっきまでこの光景を眺めながら遠ざかっていたのに、今はそれに向かって近付いているなんて……。







「凛音!!」
「凛音ちゃん!!」
「りっちゃん!!」
「凛音さん!!」
「リン!!」



水面に手が届きそうな所まで来た時、皆の声が聞こえてきた。



「凛音!凛音!!」



それは、さっき頭の中で聞こえた声よりより鮮明で。



───やっと、皆に逢えた。




薄れゆく意識の中で、そう小さく呟いた。
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