Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
「凛音、凛音!」
「……っ、とお、や……?」
「良かった……っ」
どうして……そんな泣きそうな顔してるの?
目を開けて直ぐ思ったのはそれだった。
だって、そう思いたくなる程あたしを見下ろしている十夜の目は潤んでいて、
「十夜………」
一言掠れた声で十夜を呼べば、十夜は返事の代わりにそっとあたしの頬を親指で撫でてくれる。
「……っ、十夜、怪我……っ」
「んなのどうでもいい」
どうでもいいって……。
ポタポタと滴り落ちるピンク色の雫に手を伸ばせば寸でのところで止められて。そのままそっと握り締められる。
「凛音……」
握り締める手が震えているのは、きっと気のせいなんかじゃない。
だって、こんなにもハッキリと伝わってくるから。
握り締められている手だけじゃなく、くっ付けている額からもハッキリと。
「凛音」
「……うん」
「凛音」
「うん」
「凛音……」
いつまで経っても途切れない呼びかけにどうしようもなく胸が締め付けられて。
額をくっつけたままあたしを呼ぶその声は、何かを堪える様に震えていた。
それはまるであたしの存在を確かめている様で……。
「……っ」
何とも言えない感情が込み上げてくる。
「……もう、十夜の傍から離れないよ」
“助けてくれてありがとう”よりも先に零れたのはそんな言葉。
十夜の傍から離れないなんて偉そうに言ってるけど、それは違う。あたしが十夜から離れられないだけだ。
だって、こんなにも想ってくれてる人、他にいない。
こんなにも愛しいと思える人も、他にいない。