Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】


「凛音」

「……うん」

「嫌だって言ってももう離さねぇから」



そう言った十夜の顔は、きっと生涯忘れる事はないだろう。


あたしを心から心配してくれて、想ってくれて、泣いてくれる。


世界で一番───愛しい人。




「……うん。離さないで」



もう、絶対離れない。


───絶対に。







「十夜、泣かないでよ」

「……泣いてねぇよ」



海水と一緒に頬を伝う涙。

十夜は違うって否定してるけど、あたしにはこれが涙だって分かる。



──ちゅっ。


だって、こんなにも近くに居るんだもん。気付かない訳ないよ。



「お前──」

「助けてくれてありがとう。来てくれて、ありがとう。……逢いたかった」



他にもまだ言いたい事がいっぱいあるけど、今はもう胸がいっぱいで何も言えない。


十夜を抱き締めるだけで精一杯だ。













「はーい。ストップ!兄ちゃん、妹のイチャラブほど見たくないものはないんですけど!」

「っ、貴に──って、なんでそんなにずぶ濡れなの!?」



そう自分で聞いたけど直ぐにピンときた。


貴兄も海に飛び込んでくれたんだ……。



「怪我人にばっか任せらんねぇよ。……ったく、怪我してるくせに飛び込むとか。無茶すんなよ」

「…………」

「まぁ、あん時のお前にそんな事考える暇もなかったか」



──何の躊躇いもなく飛び込んだからな。


そう言った貴兄は、呆れたように肩を竦めてみせた。


けど、言葉とは裏腹に何故か嬉しそうで……っていうか、十夜、怪我大丈夫なの!?


……っ、最低だ、あたし。十夜に逢えたのが嬉しかったからって怪我の事忘れるなんて……。

< 387 / 460 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop