Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
「凛音」
「……うん」
「嫌だって言ってももう離さねぇから」
そう言った十夜の顔は、きっと生涯忘れる事はないだろう。
あたしを心から心配してくれて、想ってくれて、泣いてくれる。
世界で一番───愛しい人。
「……うん。離さないで」
もう、絶対離れない。
───絶対に。
「十夜、泣かないでよ」
「……泣いてねぇよ」
海水と一緒に頬を伝う涙。
十夜は違うって否定してるけど、あたしにはこれが涙だって分かる。
──ちゅっ。
だって、こんなにも近くに居るんだもん。気付かない訳ないよ。
「お前──」
「助けてくれてありがとう。来てくれて、ありがとう。……逢いたかった」
他にもまだ言いたい事がいっぱいあるけど、今はもう胸がいっぱいで何も言えない。
十夜を抱き締めるだけで精一杯だ。
「はーい。ストップ!兄ちゃん、妹のイチャラブほど見たくないものはないんですけど!」
「っ、貴に──って、なんでそんなにずぶ濡れなの!?」
そう自分で聞いたけど直ぐにピンときた。
貴兄も海に飛び込んでくれたんだ……。
「怪我人にばっか任せらんねぇよ。……ったく、怪我してるくせに飛び込むとか。無茶すんなよ」
「…………」
「まぁ、あん時のお前にそんな事考える暇もなかったか」
──何の躊躇いもなく飛び込んだからな。
そう言った貴兄は、呆れたように肩を竦めてみせた。
けど、言葉とは裏腹に何故か嬉しそうで……っていうか、十夜、怪我大丈夫なの!?
……っ、最低だ、あたし。十夜に逢えたのが嬉しかったからって怪我の事忘れるなんて……。