Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
彼方が殴られたって事は直ぐに分かったけど、殴った人は隠れてて見えなくて。彼方が離れたところで漸くその人物が分かった。
「十夜ばっかズルい!」
思いっきり後頭部を叩かれて、ちょっぴり涙目の彼方サン。
いつもならあたしも「変態彼方!」と言って文句の一つでも言ってるけど、今の一発を見たらそんな気も失せてしまった。
余りにも痛そうだから、よしよしと頭を撫でて慰めてあげる。
「凛音ちゃん、それじゃまた彼方殴られちゃうよ?」
「……っ、壱さん!」
クスクスと控えめな笑みを零しながらやってきたのは、あたしの心のオアシス壱さんで。
目の前に座った壱さんは、笑みを深めながらあたしの頭をポンポンと優しく撫でてくれた。
「凛音ちゃん、おかえり」
「壱さ……っ」
「凛音ちゃん泣かないでよ。凛音ちゃんに泣かれたら俺まで十夜に殴られちゃうよ」
「……っ」
「ふふ。嘘だよ。我慢しないで。凛音ちゃんの為ならいくら殴られてもいいよ」
いくら殴られてもいいって……。
壱さんのドM発言が面白すぎて、思わず笑みが零れる。
そんなあたしを、壱さんは怒るどころか同じように笑い返してくれた。
溢れんばかりの笑顔を見て思った。やっぱり壱さんと居ると癒されるなぁって。
壱さんの笑顔を見るだけで心がほっこりするっていうか、優しい気持ちになれる。
例えるなら、可愛い動物を見てるような……って、こんな事言ったら怒られちゃうか。
「凛音ちゃん?どうしたの?」
「う、ううん、何でもないよ」
きょとんとする壱さんに慌てて首を振った時、
「優音……っ、遊大!!」
彼方達の後ろに、あたしを見つめている優音と遊大が居る事に気付いた。