Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
優音の怒声を聞いても尚、素知らぬ顔で距離を詰めてくる。
流石に身の危険を感じて身体を捩ったけど、当然腕が外れる事はなく、逆に掴む力が強くなった。
「近寄んないで!!」
必死にもがきながらそう叫ぶけど、シンは止まらない。
「……っ、」
目の前で止まったシンが更に腰を折って詰め寄ってくる。
次第に近付く距離。
シンの顔まで三十センチもない。
「──奴等さ、知ってんだよ」
あと十五センチといった所でピタリと止まったシンがボソリとそう呟いた。
その言葉に眉根が寄る。
……知ってる?って何を?
「俺達が鳳皇の元傘下だって事」
「……っ!?」
シンの言葉にカッと目が見開いた。
当然だ。
「お前だけだよ。知らなかったの」
だってあたしはそんなの聞いた事がなかったのだから。
「十夜達が、知ってる……?」
「あぁ、そうだ」
「あたしだけが、知らなかった……?」
「残念な事にな」
「……うそ」
受け答えをしていると言うよりも独り言に近かった。
頭の中が混乱してシンの言葉が理解出来ない。
……シンの言っている事は本当なの?
“D”が鳳皇の元傘下だったって事、十夜達は本当に知ってた?
知ってたなら何故あたしに教えてくれなかったの?
頭の中に浮かぶのは疑問符ばかりで。
心が徐々に不安と言う名の感情に支配されていく。
「なんで……」
最終的に生まれたのは十夜達への疑心だった。