Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
甘すぎるその囁きは脳天に響いて、一瞬にして頭の中が十夜だけになってしまった。
意識してしまうともう何もかもダメで。
あたしに触れている大きな手にも、
未だに耳に感じる微かな吐息にも、
「凛音……」
甘く紡がれる十夜の声にも。
十夜の全てに神経が集中して、もう堪らない気持ちになる。
「フッ。心臓の音すげぇ」
「……っ、仕方ないでしょ!」
なんでそうなったか分かってるくせに!
ほんと意地悪なんだから!
「お前だけじゃねぇよ」
「へ?……わっ!」
予告もなく後ろへと倒れたもんだから、ビックリして素っ頓狂な声が出た。
「ちょ、十夜、肋骨ひび入ってるのに!」
「これぐらい我慢出来る」
「でも、」
「いいから」
「っ」
仰向けだったのを抱き直されて、向かい合うように抱き締められる。
「あ……」
「お前と同じだろ」
うつ伏せになって分かった、十夜の心臓の音。
「……ほんとだ。速い」
トクトクと波打つ鼓動は、確かにあたしと同じでいつもより速い。
「十夜もあたしにドキドキしてるんだ」