Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
あたしがおとりになったあの日から、中田の目撃情報が全くと言っていい程ない。
中田と最後に会ったのは、あたしと遥香さん、そして、あたしを捕らえにきたDだけ。
あたしはあの時、遥香さんを逃がそうと中田に敵を押し付け、あの場から去ってしまった。
だから、あれから中田がどうなったのかは誰も知らなくて。
Dにやられたという情報もないし、無事という情報もない。
せめて無事なのかだけでも分かれば気にならなくて済むんだけど……。
正直な所、中田の安否を知る方法は一つだけある。
それは、中田が匿ってくれたあのマンション。
あのマンションへ行けばきっと中田は居るはず。
けど、あたしはあのマンションへ行くつもりはない。
だって、中田が言ってたから。
“此処は隠れ家の一つだ。俺しか知らない”って。
だから、あのマンションへは行かない。
それが、あたしを助けてくれた中田への恩返しだ。
──コンコン。
「……入れ」
リビングのドアを叩く音がして、寝てる十夜の代わりに煌が入れと声を掛ける。
「失礼します」と言って入って来たのは千暁くんだった。
千暁くんは玄関に入るなり頭をぺこりと下げて「到着しました」と一言だけ告げてリビングから出て行く。