Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
「シン!待てって言ってんでしょ!!」
追い掛けようと足を一歩踏み出すけど、それより先にはどうやっても進めない。
ガッチリと拘束された両腕が進もうとする両足を阻む。
「はな、してっ……!!シンッ!!」
徐々に遠ざかっていくシンの背中。
幹部達と合流し、悠然とした足取りで去っていくその後ろ姿に持っている力を全て注ぎ込んで叫んだ。
「待ってってば……ッ!!」
けれど、どれだけ叫んでも無駄だった。
まるであたしの声なんて聞こえていないとでも言う様に一度も振り返らずに歩いていくD幹部達。
「シンッ……!!」
どれだけ声を張り上げても振り返らない。
追い掛けたくても拘束されている両腕がそれを許さない。
どんなに暴れても男の力には敵わなくて。
「……っ、待ってって言ってんでしょ……っ!」
自分の無力さを改めて実感した瞬間だった。
「テメェ等覚えてろよ!次会ったら容赦しねぇからな!!」
優音……。
殺気混じりの声に振り向けば、同様に暴れている優音が目に入って。
下っ端達が逃がさないとでも言う様に拘束していた。
あれでは絶対に逃げられない。
“D”の姿が視界から完全に消えたせいか、混乱していた頭が次第に冴えてきた。
取り敢えずこの状況をどうにかしなきゃ。
そう思ってはいるけれど、囲まれているこの状況ではどうする事も出来ない。
両脇に一人ずつ。
少し離れた所に五、六人。
優音の周囲にはザッと見て十人程。
今のあたし達では正直キツイ。