10年前の約束。
私はもう一度最初から弾いた。
「出だし、勢い足りねー。」
「そこ、肘から行かねーからおせーんだよ。」
「そこ走りすぎ。」
私が弾く度に注意をしてきて
私は言われた通りに弾くだけで
上達しているのが自分でもわかった。
「………ピアノ、好きなんだね。」
「俺は聴く専門。」
「でもすごいよ。
うまくいかないとこがこんなに簡単によくなるなんて…。」
「お前、独学だろ。」
「え?まぁ…。
昔はピアノ通ってたけどね。」
今はそこまで甘えられないから。
「指導者、つけねーの?
つーかそんだけ弾けてなんでこの学校なわけ?」
「うち、両親いないから。
そこまで甘えられないの。」
「………悪いこと聞いたな。」
「いーよ。」
私も本当は誰かに習いたいけどね…。