10年前の約束。


「お前さ、」


「凛音って呼んで。」


「はぁ?」


「いいじゃん。凛音!」


「はいはい、凛音な。

その約束の男に似たやついたんだろ?

付き合うわけ?」


また奈々かな…。


「……………わかんない。

正直ね、会ったときはびっくりした。

本当にそっくりだったから。

でもいまいちピンとこなくて…。

本当にこの人だっけって思ったりして…。

会えたことは嬉しいんだけど、

でも好きとは違うんだ。感動すらない。

確かに似てるし、この人かもって思うけど…。」


「………じゃあコクられたらどうすんの?」


「これから好きになるかもだけど……

今はないかな。好きじゃない。

私、思い出に恋してただけなのかも。」


「ふーん、そっか。」


「そういえば葉山くんって彼女いるの?」


「凛音も優希って呼べよ。」


「あ、うん。

じゃあ優希って呼ぶ!」


たったこれだけのことなのに

なぜか私の心は舞い上がっている。


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