俺様黒王子とニセ恋!?契約
「だって普通ないだろ。緊張で全身震わせて泣きそうになりながら俺のこと好きだって言っておいて、無理矢理プレゼント押し付けて逃げるとか」

「う……」

「しかも、名乗らない上にカードも名前だけ。お礼しようにも返事しようにも、学年もクラスもわからない。探して欲しいんだか雲隠れしたいんだかわからなすぎ。こっちだって暇じゃないんだ。そんなわけわかんない女、探すわけないだろうが」


篤樹の毒舌は威力を増して、私の胸にビシバシと突き刺さる。


「むしろ、あまりにマヌケで、何かの策略かと思うくらい印象に残ってたよ。……まあ、一瞬で顔も覚えてなかったし、今となっては名前もうろ覚えだったけどな」


篤樹はそう言いながら、まるで懐かしむように目を細めた。
つられるように声も柔らかくなって、私は目の前にいる篤樹にドキドキしてしまう。


「……ごめん。すごく嬉しい」


顔が火照るのを感じて、俯いてボソッと呟く。


「だから勘違いするな。全然褒めてないし」


間髪入れずにそう言って、篤樹は私から表情を隠すように背を向けた。


「どっちにしても、自分で勝手に逃げ出したお前と、どうこうなんてありえなかったしな」


私はゆっくり顔を上げた。
篤樹はパンツのポケットに手を突っ込んで、軽く肩を竦める。
そして、左手に抱えていた会議資料を軽く抱え直した。
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