俺様黒王子とニセ恋!?契約
「大人しくてオドオドして、ほっとけないタイプだった。それが高校生の時の澪と同じように、全身震わせて告白してきたから、なんの因縁かと思ったけど」

「……私と似てたの?」


思わずそう訊ねると、篤樹は微妙な笑みを浮かべた。


「あっちの方が可愛かったけどな」


そして、そんな言葉でまた私を打ちのめす。


「でもまあ、付き合ってるうちに情も湧くって言うか……少なくとも、好きだったし大事にしてた。別れること考えたことなかったし、このまま行けば普通に結婚するのかなあとか、漠然と考えてた」


篤樹が淡々と言うから、何かの聞き語りを聞いているように思ったけど。
私には毒舌ばかりの篤樹の言葉だと思ったら、とても胸が痛かった。


大きな窓から、天然の陽射しが挿し込んでくる。
私と篤樹に降り注いで、二人の影を床に落とす。


それをボンヤリと見つめる私の頭に、篤樹の言葉がグルグルと回っている。
そして、対する私の心も迷宮に陥りそうだった。


そんな風に思っていた彼女と、どうして別れてしまったの?
それを私が口にする前に、篤樹は自嘲めいた表情で唇の端をわずかに歪めた。


「二年経った頃、付き合ってることが周りにバレたんだ」

「え……」

「元々言いたいことも飲み込むタイプだったから、俺とのことで陰で他の女子社員から嫌がらせ受けてたのも、一言も言わなかった」

「……」

「俺に何も言わずに会社辞めて、実家帰って。勝手に見合いして結婚しちまった」
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