俺様黒王子とニセ恋!?契約
他人事のような篤樹の口調に、私は思わず息をのんだ。
そんな、と無意識に声が漏れる。
「彼女も、篤樹から逃げ出したから、追いかけなかったの……?」
私のように……?
やるせない感情がこみ上げて、そんな声を上げながら、私は篤樹の目の前に立った。
そして、真下からその茶色い瞳を見上げる。
「なんで……そんなに好きだったのに、どうしてっ……」
「わかったような口きくなっ!!」
突然感情が息吹いた篤樹の鋭い声に、私は一瞬返す言葉を失った。
「お前に言われなくても、連れ戻そうとした。俺の全部をかけて、守り抜くつもりだった。でも、守られるのが辛いって拒否られて泣かれたら、それ以上どうにも出来ないだろうが!!」
「っ……」
「……男としての力量を信じてもらえなかった。なのに、それ以上俺に何が出来たんだ……!」
初めて聞いた。
篤樹がこんなに声を荒げるのを。
抑えられない感情を溢れ出すのを。
それが、私じゃない他の誰かを思ってのものだとわかっていても、心が揺さぶられてキュンとした。
どうして私の為じゃないんだろう。
そこまで彼の理性を狂わせる想いが、私には向けてもらえないんだろう。
そう思うだけで、苦しくて切なくて涙が溢れそうだった。
「……もう嫌なんだよ。社内ってだけで理不尽な噂をされる。日々顔を合わせるオフィスで、その距離が彼女を苦しめてた。逃げ出すしか出来ないくらい、アイツに辛い思いをさせてた」
私から顔を背けて、篤樹が、らしくないほど小さな声でそう言った。
そんな、と無意識に声が漏れる。
「彼女も、篤樹から逃げ出したから、追いかけなかったの……?」
私のように……?
やるせない感情がこみ上げて、そんな声を上げながら、私は篤樹の目の前に立った。
そして、真下からその茶色い瞳を見上げる。
「なんで……そんなに好きだったのに、どうしてっ……」
「わかったような口きくなっ!!」
突然感情が息吹いた篤樹の鋭い声に、私は一瞬返す言葉を失った。
「お前に言われなくても、連れ戻そうとした。俺の全部をかけて、守り抜くつもりだった。でも、守られるのが辛いって拒否られて泣かれたら、それ以上どうにも出来ないだろうが!!」
「っ……」
「……男としての力量を信じてもらえなかった。なのに、それ以上俺に何が出来たんだ……!」
初めて聞いた。
篤樹がこんなに声を荒げるのを。
抑えられない感情を溢れ出すのを。
それが、私じゃない他の誰かを思ってのものだとわかっていても、心が揺さぶられてキュンとした。
どうして私の為じゃないんだろう。
そこまで彼の理性を狂わせる想いが、私には向けてもらえないんだろう。
そう思うだけで、苦しくて切なくて涙が溢れそうだった。
「……もう嫌なんだよ。社内ってだけで理不尽な噂をされる。日々顔を合わせるオフィスで、その距離が彼女を苦しめてた。逃げ出すしか出来ないくらい、アイツに辛い思いをさせてた」
私から顔を背けて、篤樹が、らしくないほど小さな声でそう言った。