俺様黒王子とニセ恋!?契約
だけど、それでいい。
愚かになれない恋なんて、感情を乱されない恋なんて、もったいなすぎる。
私は、心の底から湧き上がる想いに身を震わせるような、そんな恋をしたい。


篤樹と、そんな恋がしたい。


篤樹が迸らせた熱い想いが、私の胸を締め付ける。
いつも意地悪に私を皮肉って翻弄した彼だから、彼が語った繊細で辛い恋の終わりに心が揺さぶられた。


もしかしたら、もう他の人と結婚してしまった彼女を、今でも忘れられないのかもしれない。
社内恋愛じゃなかったとしても、もう恋はしないと、そう思っているのかもしれない。


始まりも別れも適当で簡単な、心を触れ合わせる必要のない関係。
それが篤樹の望むものなら、私は与える覚悟がある。


そばにいたい。
それだけが私の願いなら、今すぐにでも彼の腕に飛び込んでいける。


だけど、それじゃダメなんだ。


覚悟を決めた夜、篤樹から関係を終わらせた。
私に向けた自分勝手な言葉だって、全部全部、彼が誠実な心の持ち主だからこそのものだ。


だから私も、まっすぐな想いでぶつかる。
そして、私の本気で篤樹の心を震わせる。


その為に今の私が出来ること。


口先だけじゃなく、本当の意味で強くなる。
それしかない。
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