俺様黒王子とニセ恋!?契約
中腰の体勢で振り返って、ドキッとしてしまう。
そこに、篤樹が立っていた。
それほど熱いわけじゃないのに、彼はスーツの上着を脱いで、右肩から背負うように手に掴んでいる。


「あ……」


会議室で話をしてから、まだほんの数日しか経っていない。
だけどお互いの業務に忙殺されて、今日まで顔を合わせていなかった。


私は、どうして今篤樹がここにいるのかわからない。
だって、篤樹がすべき業務は、ここにはないはずだから。


「……お、お疲れ様。どうしてここに……?」


段ボールを持ち上げたままで訊ねると、篤樹は手にした上着を手近な段ボールの上に乗せた。
そして、シャツの袖ボタンを外して腕捲りすると、私が持っていた段ボールをヒョイッと奪い去った。


「え……?」

「こういうのは、男の仕事だろ。なんで誰か呼ばないんだよ」

「……え?」


戸惑いながら見つめる私の前で、篤樹はラベルを見て段ボールの中身を確認した。


そして、


「奥でいいな」


と呟いて、私が移動させようとしていたスペースをいとも簡単に見破って、スタスタと奥に歩いて行く。
コンクリートの剥き出しの床にドサッと置くと、ふうっと息をついて私を振り返った。
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