俺様黒王子とニセ恋!?契約
「特に問題がなかったなら、明日でも大丈夫だろ。……四宮さん、君も今日は定時で帰宅しろ」

「え？」


命令口調でそう言われて、私は戸惑いながら何度か瞬きをした。
それを見て、金子さんがわずかに表情を緩めて目を細める。


「俺も人のことは言えないが、君、酷い顔してる」

「えっ！？」


反射的に両手で頬を抑えた。


地味なのは認めるし美人でないのも重々承知だけど、面と向かってそこまで言われるとは地味にショックだ。
あ、もしかして化粧が崩れてるとかっ……！？


一瞬にしてそこまで思考が巡って、私は慌ててパソコンのモニターに顔を映して確認しようとした。
そんな私を、金子さんは肩を揺らして笑う。


「ああ、違う違う。ごめん。俺も疲れてるな。言葉のチョイスを間違えた。『酷い顔色』だ」

「あ、なんだ……」


私も苦笑しながらホッとする。
そうして背筋を伸ばして、はは、と短く笑い声を上げた。


良かった。
これでもうら若き乙女なんだから、『酷い顔』じゃ傷つく。


「なんだじゃないぞ。大事なのは前日と当日だ。今日・明日は極力仕事量を抑えて早帰りして、疲労回復に努めよう」


私と同じように『酷い顔色』をしながら、金子さんが口にするのは、メンバーに対しての気遣いであり、プロジェクト成功への責任でもある。
そしてきっと、軽く言ってはいても、金子さんも早く帰って休みたいんだろう。


そう感じたから、私は素直に頷いた。
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