俺様黒王子とニセ恋!?契約
「お前はいいから。休んでおけ」

「……え?」


目だけを上げて篤樹を見つめると、篤樹はわずかに肩を竦めた。
そうして、私の手を掴むとその平の上に車の鍵を落とした。
篤樹が目を向けるその先に、一台の白い小型車が見える。


「営業先が交通の便が悪いとこだったから、こっちでレンタカー借りてたんだ。あれに乗ってろ」

「え? でも……」


帰りも私が金子さんと運転交代しないと。
そう言いかけた時、荷物を運びながら金子さんが私を振り返った。


「俺は大丈夫だから。帰りは片桐に東京まで連れて帰ってもらえ」


そんな言葉を浴びせられて、私は大きく目を見開く。


「そ、そんなっ……! そうしたら、金子さんはっ!」


私が来た意味がない。
そう言い募ろうとしたのに。


「ここに来るまでで仮眠は取らせてもらったから、俺の心配はしなくていい」


金子さんに先手を打ってそう遮られてしまった。
思わずグッと声をのみ込む。
そんな私の隣で、篤樹は私の手をギュッと握りしめて、鍵を押し付けた。


「……だってさ。リーダーがそう言うんだから、大人しく命令に従っておけ」


フッと口元を歪ませて笑いながら、篤樹は私に背を向ける。
そうして、力仕事に携わる。


「……そんなの……」


金子さんが私の体力を気遣ってくれたのはとてもよくわかる。
もしかしたら、私がここについて来たことが、むしろ迷惑だったのかもしれない。


そして篤樹だって……。
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