俺様黒王子とニセ恋!?契約
篤樹に心配をかけるだけだと思ったから、言われた通り大人しく眠って体力回復に努めようとした。
なのに、額に落とされたキスの感触と篤樹の匂いのする布団のせいで、自分の心臓の音がうるさすぎて眠れやしない。


結局、篤樹が出て行ってから一時間でベッドから起き出して、私は落ち着かない気分のまま寝室を抜け出した。


私の狭いワンルームとは雲泥の差。
寝室の向こうには、それほど広くはないけれどさっぱりとしたリビングルームが広がっている。
落ち着いたナチュラルブラウンのカーテンに、チェストやソファも同系色でまとめられている。
ソファの背もたれには、ふんわりと毛足の長いオフホワイトのカバーがかけられている。


男の人の一人暮らしってもっと雑然としているもの、と勝手な先入観があったけれど、むしろ私のゴチャッと物が多い部屋よりずっと片付いている。


勝手に使っていいと言われたからなんとなく眺めてしまう。
一人暮らしにしては広くて立派なキッチンも清潔だ。
と言うよりはあまり使用感がない。


もしかしたら……。
物が少ないのも、この部屋で過ごす時間が少ないせいなのかもしれない。
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