俺様黒王子とニセ恋!?契約
平日は仕事に追われて、寝る為に帰るだけ。
いつもたくさんの仲間や女の子に囲まれていた篤樹だから、きっと土日は仲間や友達と会う機会も多いはずだ。
そして一年前までは……ずっと彼女と過ごしていたのかもしれない。


ついそんなことを考えて、目線を足元に落としてしまう自分に、ハッと我に返った。


ダメダメ。そんなこと気にしない。
篤樹に、彼女のことを忘れて欲しいと願っているのは私だ。
それなのに、彼女と過ごしていた頃の篤樹を想像して落ち込んでる場合じゃない。


ハアッと大きく肩で息をしながら、私はその場にしゃがみ込んだ。
無意識に額に手を当ててしまう。


篤樹の唇が触れた場所。
その柔らかい感触を思い出して、頬が火照るのを感じてしまう。


何をドキドキしているんだろう。額のキスくらいで。
だって唇のキスだって何度かした。
それ以上のことだってしてるのに、どうしてこんなことで今更……。
いや、今更、なんて思える自分もおかしい。


落ち着け私、と自分に言い聞かせるけれど、加速する鼓動を抑えられない理由は自分でもちゃんとわかっている。
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