俺様黒王子とニセ恋!?契約
「……っつーか、澪。なんで大人しくベッドで寝てなかったんだよ。熱出してるって言うのに、ソファじゃしっかり休めないだろ」


向けられる視線に非難の色を感じて、私はそっと肩を竦めた。


「でも大丈夫だし。……それに、ベッドはちょっと落ち着かなくて……」

「は?」

「いや、えっと……」


その理由を説明するのはちょっと恥ずかしい。
ついモゴモゴと口籠ると、妙に似合わない急須を手にした篤樹は思い当ったらしく、意地悪くニヤッと笑った。


「……は~ん……。読めた」


その視線にも声色にもドキッとして、私は慌てて篤樹から顔を背けた。


背後でコポコポと音がする。
篤樹はお茶を淹れたマグカップを二つ手にして、私の方に戻って来た。


「俺に抱かれたこととか思い出して、ドキドキしちゃった?」


カップをテーブルに置きながら、背を屈めて顔を覗き込まれる。
そんな言葉にドッキーンと鼓動が大きく跳ねた。


「そ、そこまで思い出してないっ!!」

「『そこまで』ね。近しいとこは想像したんだ」

「してませんっ!」

「はいはい」


肩を揺すって愉快気に笑いながら、篤樹がソファにドスッと腰を下ろした。
そして自分の隣をポンと叩いて、


「ほら、澪。お前も座れ。食おうぜ」


そう言って私を促す。
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