俺様黒王子とニセ恋!?契約
ふうっと、小さな吐息にいろんな感情が混じるのがわかる。
私はグッと顔を上げて、橋本さんを見つめた。


「あの。誤解しないでください。私、昨夜熱出して……。片桐さんは心配してくれて、一緒にいてくれただけですからっ……」


焦る心に煽られて、私は橋本さんにそう言い募ってしまう。
そんな私の必死さに彼女は目を丸くして、そして、俯くと肩を竦めて小さく笑った。


「そんな。私にそんな必死に言い訳しないでください。四宮さんも片桐さんのこと好きなのはわかってるし、私は一度振られてます。だから……いいとか悪いとかじゃないんです」


そう言って、橋本さんは再び手を動かし始めた。
湯気の立つご飯を小さな茶碗によそって、真ん中に梅干しを押し入れる。
そして、濡らした手に塩をまぶして、リズミカルにギュッギュッと握っていく。
綺麗な三角のおにぎりが完成した。


「ただ……」


小さく呟いて、橋本さんは出来上がったおにぎりを私が作った物の隣に並べた。
そして、それをボンヤリと眺める。


「途中からでもプロジェクトに参加させてもらえて、舞い上がってたんですけど……。私、きっと最初から勝ち目なかったのかな、って思って」

「え?」


私は橋本さんの綺麗な横顔をジッと見つめる。


金子さんも橋本さんも、なんで同じことを言うんだろう。
最初からって、何を言ってるんだろう。
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