俺様黒王子とニセ恋!?契約
二月――。
その週末は、一段と寒かった。


記録的な大寒波に襲われ、金曜、土曜と首都圏にも大雪が降り、交通網は麻痺してテレビのニュースもそれ一色だった。


日曜日は、雪も止んで、太陽が姿を現した。
一面の銀世界に陽射しが降り注ぎ、雪の結晶がキラキラと輝く。


それでも、気温は上がらない。
積もり積もった雪を溶かす力にはならず、あちこちが真っ白のままだ。


そんな中……。


私は、ザクザクと雪を踏み締めながら、懐かしい母校に辿り着いた。
閑散とした校門を通り過ぎて、滑りそうになる足に力を込めて、校舎の前を通り過ぎる。


広い校庭は、足跡一つ見出せない。
まだ誰も踏み入れていない新雪をギュッギュッと踏み固めながら、先に進む。



冷たい空気で頬を赤く染めて。
キンと張り詰めるような空気の中、口から白い息を吐き出す。


そうやって辿り着いたのは、体育館の奥にある弓道場だ。
ここから既に、屋外にある三つの的がわずかに見える。


かじかんだ赤い手で、なんとか引戸を開ける。
まるで凍り付いているかのように、ガタガタと引っかかる。


玄関先でレインブーツを脱いで、感覚が麻痺したような足で長い廊下を音を立てないように歩く。
そうして突き当たった開け放たれた道場……。


そこに、道衣を纏った篤樹が弓を構えていた。


最後に会った時より少し痩せたその姿に、胸がキュンと苦しくなった。
< 169 / 182 >

この作品をシェア

pagetop