俺様黒王子とニセ恋!?契約
「俺、好きだよ。お前のこと」


篤樹は静かにそう繰り返して、私が作った距離を埋めるべく、ミシッと床を鳴らして足を踏み出して来る。
そうして、硬直したままの私の頬に弓懸した右手を添えた。


「……おもしれえ顔」


その上、そんな一言を呟く。


「あ、あつ……」


私はいっぱいいっぱいで、篤樹の一言に文句も言えない。
けれど篤樹はキュッと唇を引き締めて、私をしっかり見つめたまま、呟くように唇を開いた。


「……俺は、逃げる女は、追わない主義だ」


その言葉に、私はゴクッと息をのむ。


「面倒なだけの社内恋愛も、絶対したくない。するわけない。……そう思ってた」


そう言って、篤樹の方がわずかに私から目を逸らした。


「なのに……。お前相手じゃ、俺も覚悟決めるしかないよな」


そんな一言に、鼓動が大きく跳ね上がった。


「あつき……」


必死に彼の名を繰り出す私の唇に、シッと篤樹が人差し指を立てる。
そうして制された言葉の先で、篤樹が目を伏せた。


「……逢いたくて、俺から仕掛けるとか、マジで計算外だった。でも……本当は、最初からヤバいと思ってたんだ」


伏せた睫毛をわずかに震わせて、篤樹が唇の先でそう呟く。
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