俺様黒王子とニセ恋!?契約
背中に感じる篤樹の体温と、身体に巻き付く力強い腕。
嫌でも先週の夜を思い出して、鼓動が速まるのがわかる。


そんな私の反応に気づいているのか、篤樹は低い笑い声を漏らしながら私の耳を甘噛みした。
ビクンと身体が震えてしまう。


「……み~お」


甘えるような呼び方をしながら、篤樹はわずかに腕の力を緩めた。
強い抱擁が解かれたことにホッとした瞬間。


「っ!?」


今度は身体を硬直させた。
篤樹の右手が、私の左胸をふにふにと揉んでいる。


「ちょっ……、篤樹っ!!」


一瞬本気でパニクりながら、慌ててその手を引き剥がした。


「なんだよ。嫌?」


ちょっと拗ねたような声色で、篤樹が私を肩越しに覗き込んでくる。
茶色い綺麗な瞳で、瞬殺力抜群の上目遣い。
一瞬くらっと流されそうになったけど、私はなんとか足に力を込めて踏み止まった。
そして、渾身の力を込めて、篤樹の腕を解いて逃げた。


何もしてないのに、ハアハアと肩で息をする。
篤樹は薄い唇をキュッと結んで、つまらなそうな表情を浮かべていた。


「さ、さっきも言ったけど、責任とか、本当にいいからっ!」


流されるな、と自分に呪文のように言い聞かせて、私は篤樹と向き合った。


「お酒の勢いで……なんて、割とよくある話でしょ?」
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