俺様黒王子とニセ恋!?契約
問いかけるように言いながら、ほんとにあるのか?なんて、疑問が過る。


ドラマや小説の世界ならそんな軽すぎる恋の始まりもあるだろうけど、現実は一体どうなんだろう。
少なくとも、私にはそんな経験あるわけないし、一生経験しえないことだと思っていた。


「……なるほどね。よくあることだから、一回ヤっただけで付き合うとか言われたら、『私何人の男と付き合う羽目になるのよ!』とか言いたい?」


皮肉げな笑みを浮かべる篤樹の声に微妙な蔑みを感じて、胸がキュウッと締め付けられる思いだった。


そんなわけないじゃない。
こんなの本当に初めてなんだから。
酔ってたけれど、篤樹じゃなかったら、私はちゃんと拒めただろう。


篤樹の言葉だって、最初から断崖絶壁に追い込まれた状態じゃなければ嬉しかった。


「あ、篤樹こそ」


なのに、こんな関係を嬉しいなんて思っちゃいけないから、私は言い返す。


「酔った勢いでシちゃった人全員に責任とってたら、キリがないほど該当者多いんじゃないの?」


可愛くない……。
こんなこと言いたくないのに、篤樹が言ったラブゲームという言葉が、私を頑なにしていた。
ゲームなんて……セフレなんて、私はそんな惨めなものになりたくない。


「……そうだな。何ヵ月経ったら時効かな」


篤樹は軽く目を伏せて、クスッと笑いながら挑発に乗る。
私は、ギュッと唇を噛み締めた。
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