俺様黒王子とニセ恋!?契約
自分でも、バカだと思う。
だってとても矛盾している。
そんな恋は始められないと心が拒絶しているのに、私は篤樹の関心が失せるのを恐れているんだ。


だって、悔しいけれど幸せなのだ。
篤樹の方に心はないとわかっていても、今篤樹のそばにいられることが、堪らなく幸せなのだ。


ゲームでも、彼のそばにいたいか。
彼じゃない他の人と本当の恋を求めるべきか。


私は、答えを出せずにいる。


「……そっちじゃねえよ」


私の皮肉に対する返事を考えていたのか、間を空けた後で、篤樹がボソッと呟いた。
苛立ちを隠すように、ガタンと音を立てて立ち上がった。
そして、大股で私に近寄って来る。


座ったままの私に、フッと影が挿した。
篤樹が背を屈めて私に顔を近付けて来る。
それがわかって、私は慌てて手でガードしながら顔を背けた。


「や、止めて! どこだと思ってるの!?」

「ここ十日ほど、仕事忙しくて澪に触ってなかったなあと思って」

「なっ……!? オフィスなのに、止めてっ」


必死に防御したまま篤樹をどけることに成功すると、私は肩で息をしながら篤樹を睨みつけた。
篤樹の方は悪びれた様子もなく、明後日の方向に目を遣っている。


「社内恋愛しない主義なんでしょ。バレたら困るのはお互い様じゃない」

「そうなんだけど。オフィスくらいしか一緒にいる時間取れないし」
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